アイアンマン


アメリカ映画はもうスーパーヒーローの大売り出し、という感じですね。
次から次へとスーパーヒーローが登場し、敵と戦っております。
けれど、敵は世界征服を企む悪人、というふうには描かれません。
スーパーヒーローたちは常に「我が内なる敵」と闘っております。
今回のアイアンマンは、ヒーローの正体が巨大軍需産業の社長さん、ですから「わが内なる敵」は相当に強力です。その「心の内なる敵」を具現化したように、父亡き後、彼の後見人として見守り続け、会社も二人三脚で支えてきてくれていた人物が「目に見える敵」として立ちはだかったりもします。
最大の敵は身内にあり。
そして「父なるもの」を倒せ。
と、これがアイアンマンが語る世界。
父なるもの、と言えば「神」ですから、この映画はつまりは「神の否定」を語ります。
だから最初に彼が究極の兵器として開発する、たった一発で街ひとつを丸ごと破壊してしまうミサイルの名前が「ジェリコ」だったりします。
ジェリコという街がモーセの跡取りヨシュアの軍勢による攻撃で壊滅し、廃墟となった、という旧約聖書に由来する名前ですね。
つまりは「神の軍勢の前に立ちはだかる者は根絶やしにしても良い」という「十字軍的思想」の象徴としてこの名前が究極の兵器に与えられています。

なんて感じで、この映画、実際に主人公がパワード・スーツを装着して敵と戦いはじめるまでの物語がとても良くできています。そっから後はおなじみのハリウッドSFXバトルで、予想を超えるほどのアクションがあるわけでもないのですが、映画というのは基本的にこれくらい面白ければぜんぜんOKだと、ぼくは思いますよ。