チェンジリング

なんだか一本ずつ、すべて遺言、というか自分の映画人生に落とし前をつける、という感じのイーストウッドです。
彼は本当に映画作家として最高峰に立ってますね。

実話を元にしながらも、この作品は紛れもないイーストウッド映画なのでした。
ちょっと『恐怖のメロディー』とか『白い肌の異常な夜』とかを思い出したりもしましたよ。
けど、なんと言っても『ザ・シークレット・サービス』で《リアリー》という名の暗殺者を演じていたマルコヴィッチを福音派の牧師役で起用しているところにずっとイーストウッド映画を見てきた者への目配せがあって、もういちど《リアリー・現実》に立ち向かう力を奮い起こせ、と伝えてくるのでした。
一本の映画として、決して《正義》を煽り立てようとしない、静かな、そして揺るぎのない監督のまなざしにこそ《矜持》という言葉が似合うんですよ、麻生さん。