愛を読む人

を見てまいりました。
スタートレック』『T4』『トランスフォーマー』と、にぎやかな映画が続いていたので、こういう静かなトーンで語られる哀切感たっぷりの映画というのは、どこかホッとさせられます。
派手なお祭り騒ぎもいいけれど、こういう落ち着いた語り口の作品はやっぱり魅力的です。


さて
いつものように
以下はネタバレ






























OK?









































これは「支配」と「従属」についての物語。
ヒロイン、ハンナが登場の時から主人公マイケル(ミヒャエル、と呼んだほうがドイツの話らしくていいのにね)を上から見下ろす位置にいたりするので、このふたりの関係性がわかりますね。
後半になって、マイケルが逆に上から下にいるハンナを見下ろすことになります。
前半はだから、マイケルが物語を朗読させられるし、後半はハンナが自分の物語を話して聞かせることになるのでした。

これは「プライド」と「罪」についての物語。
プライド故にハンナは自分の「秘密」が公になることを拒み、「罪」を一人背負うことになります。
マイケルは「ドイツ人」としてのプライド故にハンナを救うことを躊躇します。
自尊心 とは 自分であり続けるための唯一の鎧なのでしょう。
ハンナは「支配者」でいたかった。
だから自分の身だしなみをきっちりと律していた。制服が好きだし、下着にだってきっちりアイロンをかける。
そんなハンナが「他人を合法的に支配できる時代」に何をしたのか。
それが問われることになり、彼女が「人としての情け」よりも「秩序とルール」を重んじたことが(つまりは彼女にとっての正しい行いが)罪だとされる。
それは同時にマイケルが秘密に口を閉ざすことで(戦後のドイツ人としての正しい行いだと信じた選択をしたことによって)「人としての罪」を生涯にわたって彼に背負い込ませることにもなる。

これは「ストーリーを語る人」についての物語。
だから原題も原作本の邦題も「朗読者」
マイケルはハンナに物語を読んで聞かせ、ハンナは自分の過去を語らせられ、そしてマイケルは自分の子どもに「自分とハンナの物語」を語り聞かせる。
文字にされた物を読むのではなく(だから手紙ではなく)、あくまでも「語り聞かせる」ことにこだわる物語。

これは五芒星についての物語。

六芒星なら「ユダヤ」のシンボルだけど、五芒星だとそれは「神の恩寵」という意味になります。
この映画の五芒星は「ヒトデ」として登場してくるので、さらに「真実の愛に備わる強い力」という意味が与えられています。
マイケルは終盤、このヒトデと向かい合うことになり、それが彼自身の罪を懺悔するエンディングへと彼を導いて行くのです。