ガーゴイル

本日、読了いたしました。
日本で暮らした経験もあり、本書の一部は日本で執筆されたというアメリカの新人作家の小説です。

タイトルに惹かれて購入したのだけど、めくるめく物語の魔法に満ちていて、すっかりのめり込んで読み終えました。

事故で全身に大やけどを負い、モンスターのような姿になって病院で生きながらえている男の元に、精神を病んでいるのかも知れない美女が近づいてきて、さまざまな時代を生きた男女の、とびきりの愛の物語を語り聞かせはじめる。
という、ある種、シエラザードのようなお話です。
全体に文章が魅惑的で美しく、語られる「別の時代に生きた愛し合うものたちのストーリー」も、ある時はブラッドベリのようだし、ある時は『薔薇の名前』のようだし、ある時はディケンズのようで、ある時はジョン・アーヴィング村上春樹のよう。
そんな幻想的で思索的で、そしてポエティックに美しい物語がちりばめられておりました。

素晴らしい小説というのは映画にすると失敗することが多いのだけど、それでもいつも、読書をしながら「これを映画化したいなあ」と思ってしまいます。

物語で重要なパートを受け持つのがダンテの『地獄編』、というのもツボでございました。