WANTED AND THE CITY

本日は、『SEX AND THE CITY』と『ウォンテッド』の二本立てをしました。

まず見たのが『SEX AND THE CITY』で、これは『ビバリーヒルズ高校白書』のクリエーター、ダレン・スターさんがロスの次はNYを舞台にしたドラマを作る! と言っていた時から期待していたドラマシリーズの、その映画化ですね。
レギュラー陣の中にシンシア・ニクソンという女優さんがいて、彼女は『リトル・ダーリング』という映画に出ていた時からのファンだったので嬉しい限りでございました。(いや、『リトル』の時もシンシアのファン、ではなく彼女が演じていたサンシャインという役が大好きだったんですね。あまりにこの少女の設定が気に入ったので、このサンシャインという役をぼくなりに解釈して主人公にして、それで一本自主映画を作ってしまったほど)
そのシンシアもすっかり大人になったわけですが、この『SEX AND 』も『リトル・ダーリング』も、お話そのものは似たようなものでございました。
どちらも女性と性についての物語。
『リトル・ダーリング』はテイタム・オニールとクリスティー・マクニコルが「どっちが先にバージンを捨てるか」競争をする、というのがメインストーリーでしたし、すっかり大人になったシンシアが出ているニューヨークが舞台の今回の作品も「40代でも最高の彼と結婚できちゃうのかどうか」を巡る物語。
そしてシンシアはどちらの映画でも主人公を脇から見ている、ちょっと問題ありの。でも本当は良い子ちゃん、という役。
『リトル・ダーリング』の時と同じように、今回もボクは最後にシンシアがニッコリと微笑むと、一緒に幸せな気持ちになるのでした。
映画としては、本当にそのまんまシンデレラをやってしまうショットがあって、シンデレラ・ストーリーというのは星の数ほどありますが、シンデレラ・ショットがある映画、というのは大変珍しいのでした。
ニューヨークというおとぎ話がよく似合う街だからこその「夢物語」に仕上がっていて、たいへん満足したのでございました。

で、その次に観たのが『ウォンテッド』。
これはワタクシの息子くんが「絶対に観ろ!」というので、じゃあ観ますよ、という感じで観に行ったわけですが。
なるほど。
ぼくが観なきゃいけない映画ではありました。
サエない意気地無しの主人公が、ある日突然「お前は伝説の殺し屋の血を受け継ぐ、暗殺秘密組織の切り札なのだ」とか言われちゃう。
そして特訓を受けてプロの殺し屋になり、父を殺した憎き敵と壮絶な一騎打ちに臨む。
なんて話なんですが、
そういう表面上のあらすじの底流にあるのは「ユダヤ教」と「カトリック」との戦いなんですね。
1000年前の機織り職人たちが、機織り機から紡ぎ出される布の、その糸の織り目模様の中に神からのメッセージを読み解けることに気づき、以来、神の命令に従って悪人を裁いて行く秘密結社が生まれた。主人公をリクルートした秘密組織とはそういう組織なのだと冒頭で説明されます。
機織り職人? 
ふむふむ、そりゃあ石工の職人たちが作り上げた秘密結社フリーメイスンだわな。その中でも特にエリート意識の高かった分派で、後の薔薇十字結社の大元となる組織、イルミナティーのことだな、これは。
とわかります。
そんな組織のリーダーで「神の言葉を解読できる」男をモーガン・フリーマンが演じていて、彼は「スローン」と呼ばれてる。スローンって、それは「ソロモン」のことだよね。フリーメイスン伝説のはじまりの部分に登場するソロモン王。
そして主人公の父を殺した憎い相手の名前がクロス。
もろに十字架って名前ですから、相手はカトリック、ということになります。
おお、これは宗教戦争の話ではないか。

神によって選ばれし民であるという「選民思想」を持ち、「ひとりの命を奪うことが千人の命を救うことになるのなら、殺人は善である」と、ユダヤ教の聖典トーラーの言葉を拡大解釈した理屈で、まだ犯罪を犯してもいない人間までも、それが神の意志である、と言って暗殺する者たち。
そんな「神の名の下の殺人」を描くこの『ウォンテッド』は「神の名の下の戦争」を遂行中のアメリカそのものでもありますね。
だからそんな「神」に裏切られた主人公が組織に反撃する時、ネズミに仕掛けた爆弾を使うわけです。ネズミを使った自爆テロ攻撃。
そして「神」を利用し、その「言葉を曲解することで、自分たちを選ばれた民」だと言い張ろうとしていた者たちは、最終的に「自分の外側にいる神なる存在」からの声ではなく「自分の中に存在する神の声」に耳を傾け、その言葉に従った行動を取ることになります。
その内なる声のことを日本語では「良心」とも言いますね。
映画の最後に主人公はカメラ目線で「君は最近、何をした?」と問いかけてきます。
アメリカは今年、大統領選挙。8年間、カトリック保守派の狂った宗教解釈で、「まだ罪を犯してもいない者に対して、テロとの戦いだと称し、先制攻撃を仕掛けてきたブッシュ政権」を支持してきたアメリカに対して、ロシアから飛び出してきた若手監督はこう問いかけているんです。
「きみはこれからどうするつもりなのか」と。
「どういう選択をするつもりなんですか?」と。
銃をバンバン撃ちまくり、それを映像サーカスで楽しませながら、これはそんなことを語る映画なのでございました。